GRADO社自身、その存在を公式には認めていないと言われるプロフェッショナルモデル、PS-1。 2005年の一時期、海外のショップ経由で購入することが可能であったが、半年程で販売終了となってしまったようだ。 現在、このモデルを入手するのは非常に困難で、稀にオークションに出品された場合もかなり高額での取引となってしまっている。
ヘッドバンドはSR-325i、RS-1と同じく革製で、銀色のハウジングが美しい。 重量は、GRADOのヘッドフォンの中で一番重い。 SR-325iもそこそこ重いが、あのくらいの重量だと「質感がある」として、好意的に受け止められる。 PS-1は人によっては不快に感じられる重さだ。 長時間着用していると耳たぶが痛くというのは他のGRADOのヘッドフォンと同じだが、 PS-1は重量があるので、頭頂部がしだいに痛くなってくる。 このようなことから、PS-1の装着感はGRADOヘッドフォンの中でも最悪といえる。 これが、PS-1唯一の、そして最大の欠点である。
他のGRADOヘッドフォンとは一線を画す音作り。 空間表現力がずば抜けている。 音像の定位が完璧で、一つ一つの音の位置関係を正確に掴み取れる。 ヴォーカルの表現力については、声の温かみや艶っぽさといった面ではRS-1に分があるが、 単純に声のリアルさだけで言えば、PS-1の表現力がずば抜けている。 歌声が目の前に浮かび上がるかのような感覚を得ることができる。
RS-1を初めとした他のGRADOの機種(GS1000を除く)の明るい音調と比べ、 PS-1はやや暗めの音調となっている。そのため、女性ヴォーカルに“萌え”の要素を期待することはできない。
PS-1の最大の特徴は、その低域表現にある。 超低域まで沈み込む、量感抜群の低域がこれでもか、というほどに迫ってくる。 量感があるとは言っても非常に締まっているため、他の帯域を干渉することはない。 最高クラスの低域表現をするヘッドフォンとして、他にEdition9が挙げられるが、解像度だけで言えば PS-1はEdition9に少し劣っている。ただし、超低域まで沈み込む感じと特有の抜けの良さから、個人的にはPS-1の低域のほうが爽快感を感じる。 高域については、かなりの伸びを示すものの、EDITION9やL3000クラスと比較すると若干劣るか。
得意ジャンルはハードロック・へヴィメタル。 音の骨格はSR-325iと同系統だが、スケール感が桁違い。 その音のインパクトから、誰かが言っていた「化け物」という表現がしっくり来る。 ハンマーで殴りつけられるかのようなスネアの音、目の前に浮かびあがるヴォーカルのシャウトと、このジャンルにおいては、 これ以上望みようがないほどの刺激的な音を奏でる。
ここまでハードロック・へヴィメタルに適したハイテンションなヘッドフォンは、他には見つからない。 素晴らしいモデルであるが故に、生産中止が惜しまれる。早期の後継機種発売が待ち望まれる。
入手困難なGRADOのPS-1を蒼天肉雄氏にお借りしたので、自宅の環境で試聴してみました。 PS-1はなにかと驚かされる個性的なヘッドフォンでした。
まず特質すべきはズッシリとのしかかる重量。 重さによって頭頂部が痛くなるものの、下方向へ力が加わるためか横方向への側圧が軽減され、 GRADO特有の耳がヒリヒリするという欠点が多少解消されているように感じました。とは言え1時間ぐらいが限界ですが。
基本的にいつもの耳の横で鳴るGRADOサウンドの延長上の音作りです。 バランスは低音寄りで、質、量ともに素晴らしく密度のある濃い低音が聞けるのが特徴です。 HD25的な低音に段違いの実体感を持たせた感じで、人工的な印象を受けず、不自然さを感じ無い非常に質の高い低音ですが、 人為的に意図して調整された低音ではあります。何しろバスドラの音は、 極端に言えばジョン・ボーナムかコージー・パウエルかというぐらいに変貌してしまい、 ベースは全員スティーヴ・ハリスになってしまったかのようです。中〜高域を邪魔するような低音ではないですが、 それでも低音の張り出し感は常につきまとい、全体で見ると中〜高域は控えめに感じてしまいます。 低域の量感があるのはもちろん、ブリブリと体の芯まで響くようなズッシリと重く、これぞ低音といった低音です。 LIVEを見に行った時に、体全体で感じる重低音をヘッドフォンで味わえる、そんな低音。 最高レベルの質の高い低音を聞かせてくれる機種です。
この特徴的な低音から、聞き疲れするように初めは感じたのですが、 音だけで言えば意外と長時間聞くことができるのが驚きでした。バランスを除けば、 自然な音を再現しているからだと思われます(音そのもののことで、音バランスは人工的で自然とは言えません)。 Voや楽器はRS-1と比較しても、頭ひとつリードしているリアリティがあり、Vo、楽器共に痛さを感じることがほぼ皆無であること 、この二点から聞き疲れする音ではない部類に入ると思います。メリハリがありつつも 、リアリティのある音で不快感を与えない(=心地良い)タイプ。RS-1と比較して、 どちらが心地良く音楽を心地良く聞けるかと言われれば、私の場合はRS-1を選択しますが、 短期集中で音楽を体全体で髄まで楽しむならばPS-1を選択します。肉雄氏の言う「空間表現力」の高さは、 他のGRADOの機種では感じられないPS-1特有のモノでしょう。RS-1でも感じることはできますがレベルが違います。
得意ジャンルはヘヴィーメタル、ハードロック、ロック。ヘヴィーメタルを聞く時に、 この系統の鳴らし方で聞くならば、コレ以上のヘッドフォンは無いと言ってもいいぐらいのレベルにあると思います。 そもそもヘヴィーメタルは音質が酷いものばかりで、低音もスカスカでバスドラが全然聞き取れないような録音が多々あるので、 これぐらい低音を強調してくれて丁度いいといった感じでしょうか。 ズッシリと安定感のあるリズム隊の音がノリの良さを存分に引き出してくれます。 他にも、この表現力を生かしてトリオ編成のジャズ等にもむいていると思います。 ジャズでのウッドベースの表現力は秀逸。心地良さではRS1に負けますが、リアリティの点に関してはPS-1です。 ソフトさを出すヘッドフォンではないので、ソースによっては非常に刺激的になるため、ソースの選択、プレイヤーやケーブル、 アンプ等での調整が必要だと思います。
最後に、特徴的な音作りで、聞くジャンルを選ぶとは言うものの、素晴らしいヘッドフォンであることは間違いないでしょう。 低音好きな人には最高のヘッドフォンだと思います。是非PS-1の再発、 PS-1クラスで違ったチューニングを施したヘッドフォンの発売を願わずにはいられない、そんな逸品です。