まず初めに、Grace Design m902をレビューするに当たって、 私自身が他のヘッドフォンアンプをほとんど聴いたことがないため、 他のモデルとの比較の上に成り立つレビューというよりは、単なる愛器紹介文になってしまうことを 念頭に入れていただきたい。
発売以来、口コミで評判が高まり、高級ヘッドフォンアンプの定番として不動の地位を確立したm902。 爆発的なヒット商品となった最大の理由は、なんといっても豊富な入出力端子だろう。 詳細は製品紹介ページを参考にしていただきたいが、私自身もこの豊富な端子を活用している。
ライン出力を搭載していてプリアンプとしても機能するが、この点の詳細は割愛。 私はあくまで、ヘッドフォンアンプとしての機能性を重視している。 ボリュームが0.5dB単位で非常に細かく、視覚的に設定できるのもm902の強み。 m902のボリューム調整に慣れたなら、他のものを使うのが煩わしくなるくらいだ。
以前、私はSA-17S1という高性能ヘッドフォンアンプ搭載のCDプレイヤーにヘッドフォンを直接挿して 音楽を聴いていたが、これと比較してもm902のヘッドフォンアンプとしての性能は勝っている。 特に感銘を受けたのがその解像度の高さで、ヴォーカルものでは、滑らかな歌声に吸い込まれていくかのような 感覚を得ることができる。この感覚は、SA-17S1ですら満足に味わうことができなかった。
アナログ接続とデジタル接続の音質の違いだが、 どちらの場合もこのヘッドフォンアンプの売りである「吸い込まれるような高解像度」を 堪能することができる。 ただ、SA-17S1からのアナログ接続のほうがデジタル接続に比べて音の密度感があり、豊かな音だと感じた。 デジタル入力よりもアナログ入力のほうが品質は勝っている。これは間違いないであろう。
癖のない素直な音で、それ故に、モニター的でつまらないと評価する人もいる。 特に硬い音というわけではないので、ケーブル等のカスタマイズにより、 オリジナリティを意識したセッティングを心がけるのも良いだろう
注目すべき機能として、m902にはクロスフィード機能が搭載されている。 クロスフィード機能の詳細については、製品紹介ページに書いてあるので割愛させていただくが、 この機能をオンにすると、たしかに耳への負担が軽くなる。音が柔らかく、聴きやすくなる感じだ。 私の場合、音楽を聴くときはほとんどこの機能を利用しないが、DVDを鑑賞する時等に、しばしば利用している。
どのヘッドフォンでも非常に高いパフォーマンスを発揮してくれる。 HD650との相性が良く、特にHD650+ZU+m902の組み合わせは特に評価が高い。 悪く言えば、HD650特有の音の繋がりの滑らかを殺してしまっているともいえるが、 高域が伸び、音場が広がることによってオールジャンルで素晴らしいパフォーマンスを発揮するようになったとも言える。 私はこの変化を好意的に受け入れているが、否定的に捉えている方がいることも忘れてはならない。
「最高級価格帯のヘッドフォンアンプを購入した」という精神的な充足感もあり、私はこのm902に非常に満足している。 値段は相当高いが、多機能を活かせる使い方をしたならば、コストパフォーマンスは悪くない。 味付けがなく、機能性と高品位な出力を必要としているのであれば、ベストな選択肢の一つと言えるのではないだろうか。