

装着感はとても良好。イヤーパッドは布製で、HD650のイヤーパッドを柔らかくし て、側圧を緩くした感触です。ヘッドフォンの装着感は音と同じぐらい重要だと個人 的には思いますので、この装着感のためにDT880を使いたくなるぐらいです。
アバウトに聞いた時の印象としては落ち着いた音のヘッドフォン。音だけでなく装着 感も含めトータルで、耳への負担が非常に少なく長時間聞けるという点に価値がある と思います。バランスはフラットと言ってもいいぐらいで、特に気になるほど低域や 高域が強いとは感じません。低音はうっすらと全体を支配するような、硬質的ではな く多少まろやかに低音を鳴らします。そのためか、少しタイトさに欠けソフトで、バ スドラやスネア等のインパクトの瞬間の打音をあまり感じることができず刺激に欠け るので、あまりロック等には合わないと思います。しかし、全般的に無難なレベルで 鳴らすだけの範囲内なので特に気にすることはないでしょう。高域は良い意味で線が 細く多少刺激的な印象。悪く言うなら迫力の無い高域ですが、DT880の場合は細い高 域が良い方向へ向いているように思います。この性質から繊細でありながら、スパイ ス的な刺激を味わえます。金属感を味わえるという意味ではシンバル、ハイハット等 の音は良い感じです。以上から、ひとつ挙げるなら高域が特徴的であるため、高域の 鳴らし方をポイントに聞くジャンルを選択するのが良いでしょう。
こもり感は無く、低音や高音が特別出ているわけでもないので、Voモノは埋もれるこ となくそれなりに良く聞けるのですが、湿り気、艶やかさがもう一歩足りない印象で アッサリ気味に感じるので、女性Voを魅力的に、といった使用用途に適しているとは 言えません。艶やかさに関しては楽器にも同じことが言えます。また音の膨らみ、響 きはあるのですが、これに関しても一段階上を求めたくなるレベル。そのため、クラ シックの山場では壮大さがいけるとこまでいけていないむず痒い感覚を受けました。 音の洪水に包まれてゾクゾクする感覚を味わいたいところでアッサリと聞かされてし まう、そんな感じです。音場は広いのですが、音をその場の中で響かせるといった部 分が物足りないとも感じました。別の表現をするなら、実際にコンサートホールで聞 いた時のような臨場感は薄いとも言えるでしょう。これらの理由から、大編成のクラ シックにはあまり向いていないように思います。ジャズ、クラシックでは小編成を選 択したほうが良さそうです。冒頭に書いた通りDT880は落ち着いたヘッドフォンで、 躍動感に欠けノリが良いとは言えません。ロック等では淡々と鳴らす印象です。ノリ が無く、緩いのが逆に効果を発揮するドゥームメタルや、癒し目的で聞くヒーリング 的な音楽全般を聞く時に重宝するでしょう。
とても良質な音で、バランスの良い音作り、落ち着いた音を鳴らしてくれるヘッド フォン。激しい、ノリ重視の音楽よりも、落ち着いた、癒し系、まったり系の音楽を 聞くときに使えます。一番の難点は音量のとり難さ。アンプ無しでの使用は相当厳し いでしょう。
このレビューはm902→DT880での印象ですが、m902との相性はいまいちだと感じまし た。DT880でこの点をもう一段階レベルアップさせたいと感じる、艶やかさ、柔らか さ、膨らみ、響き等を更に向上させることがDT880をより活かすことになると思うの で、ヘッドフォンアンプはP-1や真空管アンプが合っているのではないでしょうか。 ただ、その場合は万能性は低くなり、癒し特化型になってしまいそうなのが問題で す。